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2017年2月2日

長野市小島・柳原遺跡群出土の塔鋺形合子(とうまりがたごうす)について(プレスリリース資料)

平成29年2月3日

プレスリリース資料

 

小島・柳原遺跡群出土の塔鋺形合子

 

長野県埋蔵文化財センター

1 概 要

 出土遺跡:小島・柳原遺跡群(長野市柳原1622ほか)(図1~図3

 調査原因:国土交通省長野国道事務所による一般国道18号長野東バイパス改築工事

 出土年月日:平成28年10月7日

 名 称:塔鋺形合子(とうまりがたごうす)の蓋(図4)

 素 材:

  銅、鉛、スズ、ヒ素からなる銅合金(表1)。奈良国立博物館によれば、本来青銅製品はスズがもっと多いが、鉛が多い点や少量のヒ素が含まれる点は、奈良時代の製品の特徴。

 

ヒ素

スズ

備考

合子本体

31~49

8~19

3~6

1

10~17

口縁2、胴部2、計4ヶ所測定

合子先端

60

13

10

1

 

(参考)銅椀

18~25

42~45

3

0.1

2~3

同遺跡出土の別製品

表1 成分分析結果

※主要成分のみ。いずれも%

 法 量:

 本 体:高さ6.3cm、口縁径7.8cm、最大胴径8.2cm、厚み1~2mm、重さ102g

      相輪(そうりん)径:第一段3.5cm、二段3.1cm、三段2.6cm

      最上段径:1.6cm(竜舎か)

 構 造:仏塔の相輪がつく合子の蓋。三段の相輪の上に、竜舎(りゅうしゃ)、宝珠(ほうじゅ)がつく(本品の宝珠は欠損)。この蓋に対応する身には、台脚(だいきゃく)が付くと考えられる。本体を鋳造したのち轆轤(ろくろ)引き仕上げ(本体を回転させ、器身を薄く削る作業)を施すと考えられている。

本品の最上段の裏側には、鋲(びょう)留めが見られる(図5)。正倉院黄銅合子(図6)にも同様のものが見られる。本品も蛍光X線分析で蓋本体と、最上部は成分が異なり(図7、表1)、透過X線観察(図8図9)でもスリットが見えることから一鋳(いっちゅう)(全体を一度に鋳造)ではなく、鋳(べっちゅう)(部分を別に鋳造)である可能性が高い。

 付着物:先端に径10ミクロン程度の繊維が付着する。絹や麻の糸の可能性がある(図10図11)。合子本体は、鉄やリンが多く検出されている。土壌の影響も考えられるが、意図的に塗布され、金属製品の発色を良く(誘色)するための処理が行われた可能性がある。

 用 途:インドや中国では舎利(しゃり)容器の例もあるが、高さ30cm程度とかなり大きい。正倉院の合子に香抹(こうまつ)が付着する例や玉虫厨子(ずし)等の絵画資料(舎利供養図)に柄香炉(えごうろ)と塔鋺形合子を持つ僧侶が描かれる例がある。日本では、仏事の香合(香の容器)とされる。

  年 代:宮内庁正倉院事務所によれば、本品は正倉院の作風に近いが、本品は、口縁(端部)がやや丸みを帯びる。法量や作風が共通する日光男体山(なんたいさん)のものは、平安時代まで下る可能性がある。奈良時代末から平安時代初か

 類 例:法隆寺献納物(1組、東京国立博物館蔵)、正倉院南倉(10組)、日光男体山山頂遺跡(13点)

 

2 遺跡の詳細

 地理的環境:千曲川左岸自然堤防上微高地の南東側、同支流の北八幡(きたはちまん)川と村山堰に切られている。

 歴史的環境:善光寺(仁王門)の真東6kmに位置。遺跡を東西に横断する市道117号線は、善光寺往来道とも呼ばれ、条里地割に一致することから水内と高井の両郡衙(ぐんが)を結ぶ古代官道に起源を求める説もある。周辺には中俣城跡や長命寺(ちょうめいじ)跡(推定)など中世の城館や寺院跡がある。

 調査履歴:同遺跡群では、中堰(2002)、水内坐一元(みのちましますいちげん)神社(1974~2007)等で、調査歴がある。いずれも小島地籍(自然堤防の北西側)が大半で弥生~平安時代の遺構が検出されている。柳原地籍(自然堤防の南東側)の調査は、今回が初めて。

 調査概要:調査対象面積6,300㎡のうち、本年度は6月~12月にうち3,000㎡を調査し、古代の竪穴住居跡15棟、中世の大溝1条、中世末から近世にかけての墓坑(土葬・火葬)や五輪塔群が検出されている。

 出土遺構:竪穴住居跡SB04埋土中から出土。後世の遺構やかく乱は及んでいないことを確認して掘り下げた。一辺6mの方形で、カマドは東辺中央。土器が30点程度廃棄された土坑がある。灰釉陶器や黒色土器を含むが、土師器(はじき)の坏(つき)が多い。高台が付く埦(わん)も見られる。遺構の年代は平安時代前期(9世紀末~10世紀初)か。

 分析鑑定等:保存処理指導(奈良文化財研究所、元興寺文化財研究所)、外形観察(奈良国立博物館、宮内庁正倉院事務所)、透過X線(県立歴史館)、蛍光X線成分分析(県工業技術総合センター)、繊維観察(信州大学繊維学部)

 

3 意義と今後の展望

 遺跡からの出土:全国では25例目(県内初)。多くが伝世品で、年代や場所が特定できる遺跡・遺構からの出土は初めてである。考古学的に非常に貴重である。

 美術工芸:正倉院黄銅合子と同様に構造が複雑、作風も精緻。美術工芸品としての価値は高い。

 地域史:地域はもとより長野県の歴史を考える上で、重要である。また、単なる希少品というだけでなく、仏具であることからこれを用いた儀式や信仰が当地で行われていた可能性もある。さらに、なぜ小島・柳原遺跡群から出土したかを探求する必要がある。

 分析観察:考古学的な観察、分析はもとより、3次元CTによる透過観察、付着物の成分分析といった理化学的な分析、観察も行う。

 保存処理:アルコールによるクリーニング後、ベンゾトリアゾールなどを浸透させ防錆をはかる。

 公 開: 2月18日(土)~24日(金)センター出土品展:長野県埋蔵文化財センター  終了しました。

        3月18日(土)~6月25日(日)県巡回企画展:長野県立歴史館

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