11月8日に辰野町教育委員会主催による発掘調査成果報告会に講師として参加しました。
70名もの参加者があり、町内の多くの方に関心をもっていただけました。

【講演風景】
竪穴建物跡や土器の出土状況などの写真やイラストを使い、縄文人が沢尻東原ムラでどんな生活をしていたのかを説明しました。「黒曜石の原石は遺跡内で出土するのか」、「縄文人はムラの中に墓を作るのか」といった質問が会場から飛び出し、自分たちも縄文時代の理解を深めなければと身が引き締まりました。

【遺物・パネルの展示】
昨年の発掘で出土した遺物や、調査状況の写真パネルを展示しました。土器の文様や土偶の顔などを間近にみることができ、大変喜んでいただけました。

【当センターの遺跡の調査情報も紹介していただきました】
会場の受付では、当センターHPで公開している沢尻東原遺跡の調査情報も紹介していただきました。
現地説明会資料(2019年9月21日開催)
現地説明会資料(PDF1.8MB)
講演会当日の様子も放映されています
LCV「ねっとde動画」 辰野町「沢尻東原遺跡」発掘調査報告会
今年度の室内作業では土器の接合と復元のほかに、遺構図面の整理も進めています。今回は現場における記録をデジタル化して、どのように報告書の資料にするかを紹介します。

【埋甕炉を発見】
竪穴建物跡から土器を囲炉裏に使った埋甕炉(まいようろ)が発見されました。
現場では形や使い方がわかるように、様々な角度から記録写真を撮ります。

【実測図を書く】
写真撮影の後は、正確な記録を残すための図面を作成します。
発見した遺構を、真上や真横からミリ単位で測り、方眼紙に記録します。

【手書きの実測図】
この埋甕炉は1/10の縮尺で記録しました。図面に記された数字は、基準点(海抜703.514ⅿ)からの高低差を示しています。

【図面のデジタルトレース】
ここからが室内整理作業です。現場の図面をスキャンして、画面上で清書(デジタルトレース)します。

【完成したトレース図】
手書き実測図をデジタルトレースして、ようやく報告書に掲載できる資料となります。
9月24日に篠ノ井東中の2年生3名が当センターにおいて職場体験を実施しました。沢尻東原遺跡の作業室では土器の接合を行いました。
【土器を接合する】
たくさんの土器片が並ぶのをみて最初は戸惑いましたが、真剣に取り組み、破片同士がつながるようになりました。
【縄文土器の特徴を学ぶ】
担当職員から縄文土器の特徴について説明を受けました。当センターでの職場体験では、このほかに図書の整理も実施しました。
7月28、29日に沢尻東原遺跡の整理作業について、県文化財保護審議委員の早稲田大学高橋龍三郎教授より指導を受けました。
【土器を細かく観察する】
土器には変色したり、器面がすり減ったり、焼けた部分や煮炊きの焦げ痕など、たくさんの情報が残っています。こうした観察から土器が何に使われたのかを探ります。
【沢尻東原遺跡の評価について】
沢尻東原遺跡は縄文中期の集落を丸ごと調査し、集落の構造がわかるだけでなく器形や文様の残りが良い土器がたくさん出土しており、長野県の縄文時代を考えるうえで大変貴重な遺跡であるとの評価を頂きました。
(参考)沢尻東原遺跡概要(pdf1.07MB)
長野県宝「信州の特色ある縄文土器」(長野県教育委員会HPへ)
【土器の接合・復元作業】
進行中
沢尻東原遺跡では、土器の接合と復元作業を進めています。
【復元した土器】
沢尻東原遺跡では、今から5,000年前(縄文時代中期)の土器が多く出土しています。上伊那地域のオリジナルな土器のほか県内外の様々な地域のものが出土しています。現在20個体以上の土器が復元できました。
【勝坂式(かつさかしき)土器(井戸尻式(いどじりしき)土器)】
粘土紐で立体的な装飾をするのが特徴です。神奈川県相模原市の勝坂遺跡や長野県富士見町の井戸尻遺跡を標識とし、中期中葉に西関東~長野県中部まで幅広く分布しています。
【梨久保(なしくぼ)B式土器】
細い粘土紐を貼り付けたり、胴体に縦横の直線を描くのが特徴です。長野県岡谷市の梨久保遺跡を標識とし、中期後葉に諏訪・松本を中心に分布しています。
【台形土器】
土器を作る時の工作台という説があります。山梨県で多く発見されています。
【夏休み考古学教室での展示】
8月7・8日に実施した、夏休み考古学教室で接合作業の公開と復元した土器の展示を行いました。複雑な土器の文様をみて見学者の方も大変感動していました。