Research調査情報

2012年9月5日

兜山遺跡 平成24年度調査情報(2)

兜山遺跡の発掘調査が終了しました。調査では古墳の横穴式石室の構造や、後世に石室が再利用されたことなどが明らかになりました。

本古墳の石室は遺体を安置する部屋(玄室)とそこから外部につながる通路(羨道)とを、門状の石によって分ける構造をもち、内部から鉄鏃(鉄製の矢じり)や刀子(ナイフ)、土師器坏・埦、青磁碗、人骨が出土しました。このうち、鉄鏃と刀子は最初の埋葬やその後の追葬に伴う可能性がありますが、土師器は平安時代、青磁碗は鎌倉時代のものです。後世に石室が再利用されたことが考えられます。

 

【横穴式石室】

写真の向かって左側の壁から石室の内側にやや張り出した石を境にして、奥が玄室、手前が羨道です。

 

【横穴式石室の床の構造】

上の写真で玄室の床に敷き詰められている小石を取り除くと、その下にやや大ぶりの石が敷かれていました。


 

【裏込めの様子】

石室の外側には、裏込めとして大小の石がぎっしりと詰められていました。これらは古墳の近辺から運ばれたものとみられますが、残っていたものだけでも7トン以上あり、古墳づくりにはかなりの労働力が投入されたことがうかがえます。


 

【石室再利用の痕跡】

これらの土器は平安時代のものです。後世に石室が再利用されたことを示す資料として注目されます。


兜山遺跡

2012年6月15日

兜山遺跡 平成24年度調査情報(1)

-横穴式石室をもつ古墳-

兜山遺跡は、千曲川西岸、佐久市大沢地籍にあり、八ヶ岳連峰から東に伸びる丘陵の南斜面に立地しています。平成20年度に実施した確認調査(トレンチ調査)では、竪穴住居跡などは確認されなかったものの、未周知の古墳の存在が明らかになりました。昨年度に石室外側と周辺のトレンチ調査を行い、本年度、いよいよ石室の発掘調査に着手しました。

本古墳は、遺体を納める施設として横穴式石室を有しています。横穴式石室は長方形の一方の壁に出入口を設けた石室で、ふさいだ出入口を開けて二回三回と、新たな遺体を運び込むこと(追葬)ができる点が大きな特徴です。佐久地域では6世紀後半からつくられるようになります。

本古墳は、墳丘はすでに失われ、石室も半分崩壊していて、残り具合は良好ではありませんが、佐久地域の古墳時代~古代の歴史を考える上で貴重な資料になることが期待されます。

なお、7月14日(土)には、古墳の現地説明会を計画しています。


 

【発掘開始前の様子(東から)】

斜面に築かれた本古墳は、墳丘がすでに失われ、横穴式石室が露出していました。南側に出入口を設けた横穴式石室ですが、出入口側(写真左側)は大きく崩壊しています。最奥部のみ残る東側壁(そくへき)石はほとんどむき出しの状態です。出入口側にある、とりわけ大きな三つの石は崩れ落ちた天井石の一部と考えられます。


 

【発掘開始前の様子(北から)】

手前の大きな石(苔が生えている)が奥壁で、その右に西側壁の一部が見えています。天井石がなくなったために、上部の壁体石や裏込め石(壁体石の外側に詰めた小形の石)が崩壊し、石室内を埋めています。


 

【石室内の掘下げ】

石室内をいくつかの区画に分け、堆積した土石層の記録(断面図や写真等)を取りながら掘り下げていきます。床面まではあと1m近くあるでしょう。


 

【石室の様子(北から)】

40㎝ほど掘下げたところです。石室の状態が次第にわかってきました。石室の幅は奥壁付近で約1.3mあり、長さは、西側壁が約4m、東側壁が約1.5m残存しています。石室全体の規模は明らかではないものの、奥壁付近の幅1.3mという点からすれば、佐久地域でも小形の部類に属する石室といえそうです。


 

【天井石】

本来、この順番で並んでいたか明らかではないのですが、天井石と思われる三つの巨石を並べてみました。個々の石は、石室幅より若干広い幅1.4mほどあり、奥行きは約1mです。したがって、あと一つないし二つはあったとみてよいでしょう。


兜山遺跡

2012年1月20日

兜山遺跡 平成23年度調査情報(2)

今年度の発掘調査は11月7日に終了しました。
盛土や羨道部は見つかりませんでしたが、石室の奥は残っていることが分かりました。今年度は遺物がほとんど出土しませんでしたが、石室内部にはまだ多くの遺物が残されているかもしれません。

【トレンチ調査風景】

【埋め戻し完了状況】

兜山遺跡

2011年10月31日

兜山遺跡 平成23年度調査情報(1)

兜山遺跡は佐久市南部の千曲川左岸にあります。ここでは2008年度の調査で横穴式石室をもつ古墳の存在が確かめられました。今年度は横穴式石室外側と周辺を調査しています。
 
【遺跡遠景(南西から)】
遺跡は尾根の南斜面にあります。斜面下部の南に入口を持つ横穴式石室があります。横穴式石室とは遺体を納めた部屋のことです。

【横穴式石室の清掃】
石室は大きな石を用いてつくられていましたが、現在は天井が失われています。

【トレンチ調査】
石室や古墳の状況を調べるために掘った調査用のトレンチです。奥に見えるのが石室です。

【石室の調査】
石室の奥の壁の裏側には川原石がたくさん詰め込まれていました。

【石室の調査】
調査を進めると地面をかなり深く掘り込んで石室が築かれていることがわかりました。

兜山遺跡

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