書名:黒部遺跡 二ツ石前遺跡
副書名:県営中山間総合整備事業に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書 信州高山地区
シリーズ番号:116
刊行:2017年(平成29年)3月
両遺跡とも、樋沢川扇状地に立地し、調査地点は黒部遺跡が樋沢川の扇頂部、二ツ石前遺跡は扇央部にあたります。調査の結果、扇状地形成時の河道変動による起伏がとらえられましたが、調査地点は古代の人々が集落を営むには適さない地でした。
今回の調査地点は、遺構がなく、遺物も希薄でありましたが、当地における扇状地利用のあり様を考えるうえで貴重な成果が得られたと考えています。
【黒部遺跡 遠景(南から)】
遺跡は、写真奥を流れる樋沢川左岸で、扇状地扇頂部にあたり、今回は遺跡の北東隅を調査しました。
【黒部遺跡 出土石器】
南側の調査区で、縄文土器の小片とともに、黒曜石製の石鏃が出土しました。
【二ツ石前遺跡 東側トレンチ】
今回は遺跡のほぼ中央を調査しました。東側の樋沢川に近い調査区からは、川によって運ばれた多くの巨礫がみつかります。
【二ツ石前遺跡 出土石器】
地山層上面より、熱性変質を受けた凝灰岩製の削器が出土しました。
-黒部遺跡の調査が終了しました-
4月から実施していました黒部遺跡の調査は5月末で終了しました。調査では住居跡や土坑といった遺構は検出されず、縄文時代の石鏃1点とわずかな土器小片が出土したのみでした。遺跡の中心は今回の調査範囲の外にあると考えられます。
【遺跡遠景】
遺跡北西の松川対岸から黒部遺跡を望む。
【道路拡幅部分の調査状況】
現道直下が地山の黄褐色土となり、遺構はありませんでした。石鏃(やじり)が1点と土器が数点出土したのみでした。
【確認調査の調査状況】
確認調査は、ほ場整備対象地に2mのトレンチ(溝)を22本掘って遺構や遺物の確認を行いました。遺構は検出されず、一部のトレンチでわずかに土器片が出土したのみでした。
【出土した石鏃】
黒曜石製の石鏃で先端部が欠損しています。
-長野盆地をみおろす山麓の遺跡-
黒部遺跡は高山村黒部地籍にあり、長野盆地北部をみおろす山麓にあります。県営中山間総合整備事業(ほ場整備)に伴い4月から調査を始めました。調査範囲は約1万平方メートルで、村道改修部分は面調査を行い、そのほかはでは幅2m程のトレンチ(溝)を掘って遺構や遺物があるかを確認しています。今のところ時期不明の土坑(穴)状の落ち込みが2基確認されたのみです。遺物は石鏃(黒曜石製)、土器片などがわずかに出土しています。
【遺跡踏査】
確認調査のトレンチ掘削をする前に、地表面で遺物が採集されるか探しています。
【遺構検出】
村道部分で遺構があるか調査面を精査しています。
【黒部のえどひがん桜】
遺跡範囲内には高山村指定の天然記念物の桜があります。樹齢500年と推定され、江戸時代の古絵地図にも記載されています。満開時には県内外から多くの観光客が見学に訪れていました。