中部横断自動車道は、昨年度末に上信越自動車道と接続する佐久小諸JCTから佐久南IC間が開通しました。現在、この間で調査された遺跡の整理作業が進められています。この近津遺跡群他の整理作業の状況を紹介します。
田切りの縁につくられた村
【近津遺跡群調査区全景(西から)】
遺跡の周辺は浅間山麓に厚く堆積した火砕流を河川が浸食した「田切り地形」が特徴的に見られます。近津遺跡群はこの田切りの谷に沿った台地縁辺に立地する古墳時代と平安時代の集落跡です。写真の左側に帯状に見える水田部分が田切り谷で、遺跡の広がる台地とは15m以上の比高差があります。
調査では古墳時代と平安時代の小規模な集落跡が発見されました。古墳時代では前期の住居跡29軒が、延長700m程の調査地区内に数箇所のまとまりを持つように検出されています。
佐久地域では広い台地上に形成された弥生時代後期の大規模集落が、古墳時代に継続せず、河川や田切りの縁などに分散・小規模化することが知られていて、近津遺跡群や隣接する小諸市鎌田原遺跡群はこうした状況を示す遺跡といえます。
【近津遺跡群出土の土器】
近津遺跡群ほか2遺跡の整理作業は、今年度から本格的に実施しています。整理作業では、出土遺物の分類、接合・復元作業を行い、現在実測作業を進めています。
出土遺物の詳細な検討はこれからですが、近津遺跡出土の古墳時代前期の土器は、弥生時代からの影響を残した土器に、器台等の新しい器種が加わって構成されている様子がわかってきました。
来年度は報告書刊行に向けて、出土遺物と検出された遺構との関係や周辺遺跡との比較・検討などにより、佐久地域における古墳時代前期の様相の一端が明らかにされるよう整理作業を進めていきます。