5月末から始めた調査は6月末で終了しました。
平成21年、23年、25年度の確認調査・本調査では、約2.5万年以前の旧石器時代石器群や縄文時代前期の竪穴住居跡、古墳時代後期の古墳がみつかっています。今年度の調査区は旧石器時代の石器群がみつかった調査区に隣接するため石器群の検出が期待されましたが、少量の古代の土器片と黒曜石の破片のみの発見となりました。
【調査風景】
佐久平の野沢地区を見下ろす丘陵の南斜面に遺跡は立地します。
北側の隣接地(写真左手)で出土した旧石器時代の石器や石器を含んでいた土層はみつかりませんでした。
高尾A遺跡の発掘調査が終了しました。調査では縄文時代前期前半(約6500年前)の竪穴住居跡1軒と古墳1基などが発見されました。特に古墳は横穴式石室をもつ円墳で7世紀後半から8世紀に造られたことがわかりました。周辺は未調査の高尾1号墳・2号墳もあります。古墳時代の人々が佐久平西側の丘陵部を墓域として利用していたことが明らかになりました。8月3日の現地説明会ではのべ57人の方が熱心に見学されていました。
現地説明会の資料はこちら (PDF 2.12MB)です。
【縄文のアクセサリー】
縄文時代前期前半(約6500年前)の竪穴住居跡の埋土から、玦状耳飾り(けつじょうみみかざり)という石のアクセサリーが出土しました。真ん中から半分に割れています。こうしたアクセサリーは特定の人が装着していたと考えられています。これを着けていたのはどんな人だったのでしょうか。
【玦状耳飾りが出土した住居】
玦状耳飾りが出土した竪穴住居跡は、平面形が隅丸方形(四隅が丸みを帯びた四角形)で、床の残存部は長辺4.4m、短辺2.9mを測ります。中央部には地床炉(じしょうろ…掘り込みを持たない炉)があり、その周りに、方形に並ぶ柱穴4基が認められます。調査区には1軒だけですが、用地外にも数軒程度住居があると考えられます。
【古墳の構造1 南から】
古墳は耕作地の造成によって一部が破壊されていましたが、墳丘の裾近くには石列、その外側には最大幅3mの溝がめぐっていました。
南側に入り口を設けた石室は、立柱石(りっちゅうせき)および梱石(しきみいし)により玄室(げんしつ・・・遺体を安置する部屋)と羨道(せんどう・・・玄室と外部を結ぶ通路)とに区画され、床には小礫が敷き詰められています。石室壁の外側には大小の礫を用いた裏込めが施されています。
【古墳の構造2 東から】
石室の奥壁には扁平な石を立てており、側壁一段目には高さのある大振りの石を用い、二段目には扁平な小振りの石を平積みしています。側壁の左から四つめの縦に細長い石が立柱石です。その手前に見える、石室を横断するように床に据え付けてある板状石が梱石です。
【古墳の再利用】
石室内に残されていた土師器の杯は平安時代(10世紀頃)のものでした。こうした土器は昨年度調査した兜山古墳の石室内 でもみつかっています。
佐久地域では平安時代に古墳の石室をお墓などに再利用していたことが明らかになりました。
-新たな古墳の発見!―
東斜面の段々畑の下を掘り下げたところ、これまで知られていなかった古墳がみつかりました。土地の造成などで大きく削られていたものの、墳丘とその周囲に掘られた周溝の一部が残存し、内部の横穴式石室も確認できました。復元直径9m程度の円墳と考えられます。墳丘の裾近くには石列がめぐっています。周溝は最大幅が3mほどあります。
周辺には高尾古墳群がありますが、過去に発掘調査がなく、くわしいことはわかっていません。今回みつかった古墳は、不明な点が多い高尾A遺跡周辺の古墳時代のようすを考える上で貴重な資料となるでしょう。
【古墳の構造】
南に出入り口を設けた横穴式石室は、残存長が3.6mと小規模で、玄室(遺体を埋葬する空間)の中ほどで幅が最も広くなる「胴張り」と呼ばれる構造です。石室は天井や上部が失われているため高さは0.7mしか残っていません。
石室の構造や規模からみて、7世紀後半から8世紀に築かれたと考えられます。
【石室内の調査】
石室内からはほぼ完形の平安時代の土師器坏が出土したほかは、ほとんど遺物はみつかりませんでした。平安時代に横穴式石室が再利用された可能性があります。昨年度、当センターが調査した佐久市大沢の兜山古墳でも横穴式石室から平安時代の土器がみつかっています。石室を祭祀や埋葬の場として利用されたのかもしれません。
6月4日より本年度の調査が始まりました。平成23年度の確認調査で竪穴状の遺構の範囲を確認している東斜面を詳しく調査するほか、丘陵の上部での確認調査も行います。昨年までの調査では、旧石器時代の石器や、縄文時代以降の遺物も出土していますが、はっきりとした遺構はみつかっていません。今回の調査では、竪穴住居などの遺構を調査することにより、遺跡のようすがさらに明らかになることを期待しています。
【重機掘削】
作業を効率的に進めるため、重機によって表土を掘削します。表土を掘り下げていくと、黄褐色の自然堆積した土の表面に、暗色の土が大小の島状に現れてきます。次に人力で土を削っていき、暗色の土が原始古代の人々が掘った穴の跡なのかどうか調べていきます。
【トレンチ調査】
調査対象地にトレンチと呼ばれる試し掘りの溝を掘り、遺構の有無や密度を調べていきます。また、トレンチの土層を詳細に観察すると、遺跡の地形や土層の堆積のようすが明らかになります。今は段々畑になっていて、自然地形は表面からわかりません。トレンチの壁にあらわれた地層が、原始古代の人々が暮らした当時の地形を復元するために大切なデータになります。写真はトレンチの壁面を平らに削っているところです。
-沢沿いに残されたキャンプ跡(旧石器時代)-
平成24年度は、平成23年に発掘調査がおこなわれた旧石器時代の遺物や遺構の整理作業をおこないます。石器の実測・トレース・接合などの遺物整理、遺物分布図や全体図などの図面や遺構の整理をすすめます。
【石器の実測】
石器を実物大で図に描きます。石器が打ち割られた順序や石材を表現しながら描きます。
【遺構図面のデジタルトレース】
発掘現場で描かれた遺構の図面を、スキャナーで読み取り、パソコン上でトレースをします。