Research調査情報

2012年12月11日

周防畑遺跡群 平成24年度整理情報

周防畑遺跡群は弥生時代の集落跡と墓跡、古代の集落跡ですが、古代の佐久郡役所である佐久郡衙や郡寺と考えられる付属寺院も近くにあったと考えられていることから、一般集落ではあまり見られない特殊な遺物も出土しています。今回はその一部をご紹介します。

 

【獣脚風字硯(じゅうきゃくふうじけん)】

風字硯でも国内外に類例のない獣脚の付いた例です。風字硯とは、硯の形が漢字の「風」の字に似ていることからつけられた名称です。獣脚が付いているだけでなく、縁が内堤のように一段高くなっていることでも特異なものといえます。国内において、獣脚の付いた円面硯(えんめんけん)は7世紀代から8世紀初頭にかけて見られます。一方、風字硯は8世紀後半から見られます。遺構外出土のため年代は不明ですが、獣脚と風字硯という年代の異なる2つの要素を併せ持つこの硯は特徴的であるといえます。
伝世品や伝聞によって獣脚円面硯を知っていた工人か発注者が新しく風字硯を作る時に獣脚を付けたのか、骨蔵器や香炉に付く獣脚を見て、風字硯の脚に取り入れたのか。想像が膨らみます。

(図は推定復元図)


【川原寺式軒丸瓦(かわらでらしきのきまるがわら)】

寺院建物の軒を飾った瓦で、複弁八弁蓮華 文(ふくべんはちべんれんげもん)の川原寺式軒丸瓦です。 川原寺は古代、飛鳥地方の大きなお寺の一つで、7世紀後半の天智・天武両天皇との関わりが指摘されています。 川原寺式の瓦を用いた寺は、天智天皇が都を移した近江国のほか、後に即位して天武天皇となる大海人皇子が天智天皇の死後に起こった壬申の乱(大海人皇子<天智天皇の弟>と大友皇子<天智天皇の子>の皇位をめぐる争乱)で拠点とした美濃・尾張地域などに多く見られます。壬申の乱で功績のあった豪族が、本拠地に寺を建立し、そこに最新の川原寺式の瓦を用いたと考えられます。周防畑遺跡群では、以前にも酒造会社の敷地から出土しています。この瓦が作られた時期などに検討の余地はありますが、周防畑遺跡群周辺にも壬申の乱やその後の律令国家の形成に関わりのあった豪族がいたのかも知れません。


周防畑遺跡群

2012年3月2日

周防畑遺跡群 平成23年度 整理情報

周防畑遺跡群は、JR佐久平駅の北方から西方、佐久市長土呂と塚原の両地籍にまたがる弥生時代と奈良・平安時代の複合遺跡です。平成18・19・21年度の3ヶ年にわたって発掘調査され、平成23年度から整理作業が始まっています。

整理が進むにつれて、奈良・平安時代の遺物には、一般集落とはやや様相の異なるものが見られることが分かってきました。古代の佐久郡の役所である佐久郡衙(さくぐんが)の中心部分は未発見ながら、周防畑遺跡群にも佐久郡衙に関わる人々の住まいがあったことが窺えます。

 

【祭祀に使われた土器 SK60遺物出状況】
掘立柱建物群(2間×2間~3間×3間の7棟ほどのまとまり)の北側に位置する2つの土坑、SK59、SK60からは、土師器や黒色土器の椀、灰釉陶器の碗や皿がまとまって出土しています。これらの土器をよく見ると、SK59には「井」?と書かれた土師器椀や、灯明具に使われたと思われる灰釉陶器碗、SK60には「夲」(=本)と書かれた灰釉陶器輪花碗(縁の輪郭が花弁形の碗)があり、SK60のそのほかの灰釉陶器の碗や皿も輪花であるという特徴があります。地鎮のために埋納された土器と思われますが、どうしてこのような土器を選んで埋めたのかは謎です。

 

【特殊な土器】
郡衙では、大領(だいりょう)以下の正式な役人のほかに、郡書生などの郡雑任(ぐんのぞうにん)と呼ばれる様々な人が働いていたことが『類聚三代格(るいじゅさんだいきゃく)』所収の太政官符(だじょうかんぷ)などの資料で知られています。周防畑遺跡群では、薬壺(やっこ)と呼ばれる須恵器短頸壺がSB80、僧侶の持つ鉄鉢(てっぱち)形の土師器がSB72といった竪穴住居跡から出土しています。国府における国医師に相当する人や、郡衙付属寺院に勤める僧侶が住んでいたことも考えられます。また、当時の一般的な器である土師器や須恵器のほかに、やや高級な灰釉陶器が多く、より高級な緑釉陶器や中国から輸入した青磁も出土しています。


周防畑遺跡群

2009年12月28日

周防畑遺跡群~最新遺跡情報

発掘調査が終了しました。
 
水田地帯の調査は9月から開始しましたが、地下水位が高く、水との戦い。弥生時代の竪穴住居跡などを調査しました。

周防畑遺跡群

著作権について : 「長野県埋蔵文化財センター」ホームページに掲載している個々の情報(文章、写真、イラストなど)は、著作権の対象となっています。また、「長野県埋蔵文化財センター」ホームページ全体も編集著作物として著作権の対象となっており、ともに著作権法により保護されています。
「私的使用のための複製」や「引用」など著作権法上認められた場合を除き、無断で複製・転用することはできません。