書名:一般国道18号(野尻バイパス)埋蔵文化財発掘調査報告書
副書名:信濃町町内その5
シリーズ番号:108
刊行:2013年(平成25年)3月
平成23年8月から9月に発掘調査をおこなった、大道下遺跡・清水東遺跡(上水内郡信濃町)の報告書を刊行しました。
野尻湖の西から南に広がる丘陵地帯は、旧石器時代から縄文時代草創期の遺跡が密集する野尻湖遺跡群として知られています。中心にある貫ノ木遺跡や仲町遺跡、上ノ原遺跡などでは、確実に旧石器時代のブロックが存在し、多量の石器が包含されていました。今回発掘調査をおこなった大道下遺跡・清水東
遺跡は野尻湖遺跡群の南限に位置しています。信濃町教育委員会によるこれまでの調査では、大道下遺跡では旧石器時代のブロックや平安時代の竪穴住居跡が確認され、清水東遺跡では旧石器時代の遺物がみつかっています。
大道下遺跡は野尻湖から南へ約3㎞に位置し、鍋山北西側の湧水地を中心とした丘陵の斜面に立地します。今回の調査区は駐車場として利用されており、縄文時代以降の遺物や遺構が包含される地層(黒色土)の多くは、削平されていました。造成土からは少量の土器小破片(縄文土器・須恵器・土師器)がみつかりました。旧石器時代の地層(黄褐色のローム層)は残っていましたが、遺構や遺物はみつかりませんでした。
黄褐色のローム層上面でみつかった土坑です。検出面では長径50cm、短径40cmの角の丸い長方形の形をしていました。深い部分が2か所あり、柱のようなものを1度垂直に立てた後、斜めに差し込んだ結果、写真のような形になったと考えられます。遺物はみつかりませんでしたが、埋土の状況から、古代以降に掘られたもので、最新で現代まで下ると思われます。
清水東遺跡は、野尻湖から南へ約2kmに位置し、鳥居川右岸に立地します。調査区は畑地として利用されていました。
旧石器時代の地層(黄褐色のローム層)は水成堆積であることが確認され、そのため、旧石器時代には水底または水辺で居住に適していないことがわかりました。縄文時代以降は離水しましたが、まだ居住には適さなかったようで、遺構や遺物は検出されませんでした。遺跡の中心は北東側のやや小高い場所にあると考えられます。