Research調査情報

2017年4月12日

ー「黒部遺跡 二ツ石前遺跡」報告書刊行しましたー

書名:黒部遺跡 二ツ石前遺跡

副書名:県営中山間総合整備事業に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書 信州高山地区

シリーズ番号:116

刊行:2017年(平成29年)3月

両遺跡とも、樋沢川扇状地に立地し、調査地点は黒部遺跡が樋沢川の扇頂部、二ツ石前遺跡は扇央部にあたります。調査の結果、扇状地形成時の河道変動による起伏がとらえられましたが、調査地点は古代の人々が集落を営むには適さない地でした。

今回の調査地点は、遺構がなく、遺物も希薄でありましたが、当地における扇状地利用のあり様を考えるうえで貴重な成果が得られたと考えています。

【黒部遺跡 遠景(南から)】

遺跡は、写真奥を流れる樋沢川左岸で、扇状地扇頂部にあたり、今回は遺跡の北東隅を調査しました。


【黒部遺跡 出土石器】

南側の調査区で、縄文土器の小片とともに、黒曜石製の石鏃が出土しました。


【二ツ石前遺跡 東側トレンチ】

今回は遺跡のほぼ中央を調査しました。東側の樋沢川に近い調査区からは、川によって運ばれた多くの巨礫がみつかります。


【二ツ石前遺跡 出土石器】

地山層上面より、熱性変質を受けた凝灰岩製の削器が出土しました。

 

北信,調査情報,黒部遺跡・二ツ石前遺跡

2016年6月8日

二ツ石前遺跡 平成28年度調査情報(2)

約2ヶ月間にわたる発掘作業が、6月7日に終了しました。残念ながら、縄文時代の生活の跡や土器などは出土していません。遺跡は現在の河原と似たような地形にあり、唯一発見された石器は、川の流れによって他の場所から運ばれてきたと考えられます。今後は、二ツ石前遺跡の立地と地形の関係をモデルにしながら、高山村内の扇状地上に存在する遺跡がどのような広がりをみせているのかを整理していきます。


【巨大な石が出現したトレンチ】

調査区の一番東側のトレンチからは、巨大な石がたくさん出土しました。作業員さんと比べると、その大きさが一目でわかります。一番大きなものは、直径約80㎝でした。遺跡の北側を流れる松川の河原石とよく似ていることから、遺跡の所在する地形は川の作用によって形成されたと考えられます。


 

【トレンチ調査】

調査地のなかでも、耕作土の堆積(たいせき)が一番薄かった地点です。そのすぐ下は、大きな石がたくさん埋まっていました。




【土層断面図作成の様子】

重機で掘削したのち、精査したトレンチの土層断面を観察し、正確に記録に残します。


北信,調査情報,黒部遺跡・二ツ石前遺跡

2016年4月26日

二ツ石前遺跡 平成28年度調査情報(1)

今回の発掘調査は、平成26年度の黒部遺跡につづき、県営中山間総合整備事業の村道拡幅工事に伴うものです。4月13日に調査を開始しました。
遺跡は、標高578~598mの樋沢川左岸扇状地の扇央部南側に立地します。過去において、遺跡からは、石鏃、黒曜石片、石棒が出土し、縄文時代の遺跡とされました。遺物の散布は希薄でしたが、集落跡の可能性も探っていく必要があり、期待されます。


【遺跡は扇状地ならではの傾斜地】

 東側から西側に傾斜する扇状地に、二ツ石前遺跡はあります。遺跡の西側は東側より約20m低くなっています。西側の遥か遠くに見えるのは、北アルプスの山並みです。



【トレンチ調査始まる】

現在の農道の両側で、掘削可能なスペースにトレンチを入れて調査を進めています。多くのトレンチは、耕作土が30~50cmあり、その下が礫混じりの黄褐色の地山層となります。


【検出作業のようす】

 重機で掘削したトレンチ内の平面・断面を、作業員さんが精査して遺構・遺物を探します。また、断面を観察すると、土層の堆積のようすを知ることができます。

【縄文時代の石器出土!】

ほかの川原石とは違う緻密な石材を使って作られた石器です。左右の側縁に細かな加工痕が見られ、木や骨を削ったり皮を切ったりする道具として使われたものと思われます。


北信,調査情報,黒部遺跡・二ツ石前遺跡

2014年6月16日

黒部遺跡 平成26年度調査情報(2)

-黒部遺跡の調査が終了しました-

4月から実施していました黒部遺跡の調査は5月末で終了しました。調査では住居跡や土坑といった遺構は検出されず、縄文時代の石鏃1点とわずかな土器小片が出土したのみでした。遺跡の中心は今回の調査範囲の外にあると考えられます。

 

【遺跡遠景】

遺跡北西の松川対岸から黒部遺跡を望む。

 

【道路拡幅部分の調査状況】

現道直下が地山の黄褐色土となり、遺構はありませんでした。石鏃(やじり)が1点と土器が数点出土したのみでした。

 

【確認調査の調査状況】

確認調査は、ほ場整備対象地に2mのトレンチ(溝)を22本掘って遺構や遺物の確認を行いました。遺構は検出されず、一部のトレンチでわずかに土器片が出土したのみでした。

 

【出土した石鏃】

黒曜石製の石鏃で先端部が欠損しています。

北信,調査情報,黒部遺跡・二ツ石前遺跡

2014年5月13日

黒部遺跡 平成26年度調査情報(1)

-長野盆地をみおろす山麓の遺跡-

黒部遺跡は高山村黒部地籍にあり、長野盆地北部をみおろす山麓にあります。県営中山間総合整備事業(ほ場整備)に伴い4月から調査を始めました。調査範囲は約1万平方メートルで、村道改修部分は面調査を行い、そのほかはでは幅2m程のトレンチ(溝)を掘って遺構や遺物があるかを確認しています。今のところ時期不明の土坑(穴)状の落ち込みが2基確認されたのみです。遺物は石鏃(黒曜石製)、土器片などがわずかに出土しています。

 

【遺跡踏査】

確認調査のトレンチ掘削をする前に、地表面で遺物が採集されるか探しています。

 

【遺構検出】

村道部分で遺構があるか調査面を精査しています。

 

【黒部のえどひがん桜】

遺跡範囲内には高山村指定の天然記念物の桜があります。樹齢500年と推定され、江戸時代の古絵地図にも記載されています。満開時には県内外から多くの観光客が見学に訪れていました。

北信,調査情報,黒部遺跡・二ツ石前遺跡

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