平成25~28年度までの発掘調査で塩崎遺跡群の東側である1区を中心に、底部に布目痕がついた土器が出土しています。隣接する昭和60年の長野市教育委員会の発掘調査(伊勢宮地点)でも、弥生時代中期の布目痕土器が出土しており、当地の弥生文化を考える上で、貴重な資料になりそうです。

【シリコンによるモデリングの道具】
布目の痕跡の観察をしやくすするため、シリコンで型をとって見ます。右からシリコンの印象材(緑色)、硬化剤(青色)とそれぞれのスプーン、型をとる布目の圧痕がある土器、シリコンをまぜる容器、手袋です。
【シリコンをまぜる】
シリコンの印象材と硬化剤をそれぞれ等量、手で30秒間よく混ぜます。
【シリコンをつけて形をとる】
よく混ぜて軟らかくなったシリコンを土器などの対象物に付けます。シリコンがなじんで固まるまで3分間待ちます。
【型がとれました!】
シリコンが固まったところで、剥がします。きれいに布目が取れました。展示用には、見やすいようにさらに着色します。展示にも出品する予定ですので、乞ご期待!
塩崎遺跡群では平成25~28年度までの発掘調査で、約2,000点の骨が出土しています。大きいものや崩れやすいもの約20点は、発泡ウレタンで周りを固めて土ごととりあげて、センターに運び込みました。現在、ウレタンを取り除いて、中の骨が見える状態に戻し、台帳作成、鑑定等を進めています。
【発泡ウレタンの除去】
もろい出土骨を保護、固定していた発泡ウレタンを取り除きます。
【骨のクリーニング】
出土骨は土ごと取り上げているので、骨が見えるように、まわりの土を少しずつ慎重に取り除きます。
【古代のウマの骨】
きれいに土を取り除くと、古代のウマの肋骨(ろっこつ)が出てきました。このウマの骨は、12世紀頃の溝跡から出土しています。現代のサラブレットが体長約2.0mに比べると体長約1.6mと非常に小柄です。横田河原(よこたがわら)合戦(1181年)で、木曽義仲(きそよしなか)といっしょに活躍したウマもこんなウマだったのかもしれません。
【出土人骨】
動物骨だけでなく、墓を中心に人骨も出土しています。とくに頭蓋骨(とうがいこつ)からは、年齢、性別などの特徴や栄養状態なども推測できます。考古資料だけではわからない情報を多く含んでいるので、学術的にも非常に貴重です。
【計測や写真などの記録】
クリーニングが終わった骨は、大きさの計測、写真撮影などをします。こうした記録を台帳にして整え、保存処理や鑑定に備えます。
【骨の鑑定】
7月11日~13日の3日間にわたって、形質人類学や動物骨の専門の先生方に出土骨の鑑定及び今後の整理方法についてご指導いただきました。非常に貴重な資料が多いとのことで、今後の整理作業も頑張っていかねばならないとの思いを強くしました。
検出作業が進むと、複数の溝跡が見つかりました。なかには、幅や深さが1m内外の溝跡もあります。水が流れた痕跡があるのかなど、さらに詳しく調べながら掘り進めています。溝跡のほかに、点在する竪穴(たてあな)住居跡、井戸跡、土坑(どこう)も見つかってきています。
【検出作業】
いよいよ本格的な発掘作業の開始です。
まずは、全員で遺構の検出作業をします。検出を進めると溝跡が見えてきました。
(写真左側に見える赤いラインは、検出された溝跡です。)
【幅の広い溝跡の掘り下げ】
上の写真とは別の幅の広い溝跡を掘り下げています。写真は、
断面がV字状になる溝跡上部を掘り下げたところです。溝跡の中央部には黒色土がたまっていて、更に深く掘りこまれていることがわかります。溝からは、弥生時代後期の遺物が出土しています。
調査も4年目を迎え、今年は「塩崎(しおざき)遺跡群(いせきぐん)」とその西側の「石川(いしかわ)条里(じょうり)遺跡(いせき)」を調査します。
石川条里遺跡は、塩崎遺跡群に住んでいた人々の生活を支えた水田跡と予想されています。塩崎遺跡群は、弥生時代から平安時代にいたるまで多くの人々が住み続けた集落跡です。水田跡である石川条里遺跡の調査は、塩崎遺跡群を考えるうえでも重要な成果をもたらすものと期待されます。
【塩崎遺跡群・石川条里遺跡発掘調査開始式】
本年度4月より、塩崎遺跡群とその西側にある石川条里遺跡の発掘を開始しました。開始式のあと、いよいよ本格的に発掘調査が始まりました。発掘調査では作業員さん約60名、調査研究員8名で今年も発掘します。健康と安全に気をつけて、皆さんの手で埋もれている歴史を掘り起こしていきましょう。

【塩崎遺跡群・石川条里遺跡 遠景(東側より)】
塩崎遺跡群の西端にあたる石川条里遺跡に面する部分では、竪穴住居跡が少なくなっていることがわかりました。その一方でさまざまな時期の井戸跡がみつかり、低地寄りに多くの井戸が掘られていたことがわかりました。井戸はかんがい用・飲水用など集落にとって重要な意味があり、これからいつ使われたものなのかといったことを調査していきます。
今年4月に始まった調査は、11月30日(月)をもって無事に終了しました。今回は、調査終盤での成果とようすをお伝えします。
【弥生時代後期の溝】
調査区の南西端で弧状に巡る、断面V字形の溝が発見されました。ムラを区切る溝のようです。
【棒状鉄製品出土】
弥生時代後期~古墳時代初頭の墓穴から、長さ34cmほどの棒状鉄製品が出土しました。詳細については、今後調査します。
【弥生時代後期の大型竪穴住居跡】
長軸が11mもあり、大勢の人が集まるような特別な住居と思われます。
【今年度最後の空撮】
今年度の発掘では、竪穴住居跡226軒、墳墓33基、井戸61基を調査しました。冬期には、これらの遺構の記録や出土品の整理作業を行います。