Research調査情報

2024年10月23日

松本市安塚古墳群 2024発掘調査情報(2)

【第13号古墳(石室)の解体】

 第13号古墳は、石室内の調査が終了したため石室の解体調査に入りました。側壁には2~4段の河原石が積まれ、奥壁には3個の石が立っています。側壁の石を上の段から徐々に取り外したところ、上段と下段の石はほとんど接しておらず、隙間に土を入れて積んでいることがわかりました。加工していない河原石が崩れないように積んだ当時のやり方がわかり興味深かったです。ちなみに、もっとも重い奥壁の石は、75kgありました。

 第13号古墳は、石室の内側に石の平坦な面をそろえて設置しています。石は石材から、梓川の河原から採取したと考えられますので、河原では平坦な面がある石を選んで採取したと考えられます。第13号古墳の調査は、石室の石すべて取り外して記録も終了しました。

石室の解体風景

第13号古墳 最下段まで石を取り外した状況(赤丸はピット)

 

【全容を現した第12号古墳】

 安塚古墳群では、令和3年度に松本市教委が行った試掘調査で発見された第12号古墳(石室)の
規模・形状を捉える調査も行いました。石室が発見された場所を拡張して精査したところ、奥壁から開口部(入口)までの長さが約6m、幅約1.5mの規模を有する石室であることがわかりました。今回調査した第13号古墳の約2倍の大きさです。

 安塚古墳群は、昭和53年(1978)に松本市教委により圃場整備に伴う発掘調査が行われ、大小2種類の古墳(石室)があることがわかりました。松本波田道路の用地内にも大小2種類の古墳が複数あることがわかっていて、来年度以降の調査がさらに期待されます。

第12号古墳 精査風景

 

安塚古墳群発掘だより 第4号(PDF:962KB)

安塚古墳群発掘だより 第5号(PDF:1085KB)

 

中信,安塚古墳群,調査情報

2024年7月31日

松本市安塚古墳群 2024発掘調査情報(1)

【安塚古墳群の発掘調査が始まりました】

 6月3日(月)から10月中旬までの予定で、松本市和田蘇我地区の北側で安塚古墳群の発掘調査を行っています。

安塚古墳群 発掘たより第3号(PDF:807KB)

 

【安塚古墳・秋葉原古墳とは】

 松本市の新村地区には、7世紀末から8世紀にかけて築造された古墳が数多く分布しています(安塚古墳群・秋葉原古墳群)。江戸時代の開田で土饅頭のかたちに似た古墳特有の盛土は削られてしまいましたが、圃場整備に先立ち松本市教育委員会が行った発掘調査では、安塚古墳群(1978年発掘)で9基、秋葉原古墳群(1982年発掘)で5基の古墳がみつかっています。

 これらの発掘調査に携わった直井雅尚氏は、この新村地区の一大古墳群は、島立地区に分布する古代集落(南栗遺跡・北栗遺跡・三の宮遺跡など)の墓地と考える重要な指摘をしています。※直井雅尚1994「松本市安塚・秋葉原古墳群の再検討」『中部高地の考古学Ⅳ』長野県考古学会

【昨年度までの調査成果】

 令和4年度には、地中に向けて高周波の電磁波を放射し、その反応で古墳の存在を確認する地中レーダー探査を行いました。令和5年度には、地中レーダーで反応を示した箇所に重機で幅2mのトレンチを碁盤の目のように掘削して、古墳などの遺構や遺物の存在を確認する調査を行いました。その結果、2基の古墳が確認され、松本市教育委員会の試掘調査で確認された古墳を含めると、調査対象地内に5基の古墳があることがわかりました。

 

本年度は、今まで確認された5基の古墳のなかで第13号古墳を調査し、さらに用地内にいくつ古墳が眠っているかを確認する調査を行います。今までの調査で、第13号古墳の石室と、古墳の周りに円形の穴(土坑)がみつかっています。

 これからの調査で、石室の規模や形状、石室の中に副葬された遺物が発見されることが期待されます。

 

中信,安塚古墳群,調査情報

著作権について : 「長野県埋蔵文化財センター」ホームページに掲載している個々の情報(文章、写真、イラストなど)は、著作権の対象となっています。また、「長野県埋蔵文化財センター」ホームページ全体も編集著作物として著作権の対象となっており、ともに著作権法により保護されています。
「私的使用のための複製」や「引用」など著作権法上認められた場合を除き、無断で複製・転用することはできません。