【後光のような光景】
4月からの発掘調査が続いています。一日の調査が終わり、暑さが和らいだ夕方に北アルプス方向を臨むと、雲の隙間から太陽の光が放射状に広がる幻想的な風景がみえます。仏や菩薩が発する光である「後光」が差すような光景です。
安塚古墳群の発掘調査を見守っている仏や菩薩が、一日の調査を労っているように感じられます。

後光のような光景
【お堂?のまわりには】
現在は、おもに中世の遺構を調査しています。プレハブ近くの調査区には、中世(16世紀)の礎石建物跡があります。お堂と考えられるこの礎石建物跡のまわりには、遺体を火葬した穴(以下、「火葬遺構」と呼称)が7基発見されました。火葬遺構からは、銭貨や火葬骨、焼土、炭化材が出土しました。また、礎石建物跡からは、撒かれたような状態で火葬骨と炭化物がみつかっているため、納骨に関わるお堂(墳墓堂)と推測しています。
今後の調査では、礎石建物跡の性格解明と、礎石建物跡と火葬遺構との関係を明らかにする予定です。

お堂と考えられる礎石建物跡と火葬遺構(南から臨む)赤丸:火葬遺構
【火葬遺構の姿】
発見された火葬遺構は、平面が長方形で、規模は長辺約1~1.2m、短辺約0.6~0.8mです。火葬遺構の中央西側には突出した場所があり、火葬の煙を出す施設と考えられます。突出部は西側にあり、中には長さ約1mに達するものがあります。安塚古墳群では乗鞍方面からの強い西風が吹くため、強い西風を受ける側に煙出しを設けることで火葬の効率を上げたものと推測されます。
火葬遺構からは多くの炭化材が出土しました。炭化材には板材・角材・丸太材があり、それらの材は棺や火葬で燃やした木材や火葬遺構の上に渡した木材であったと思われます。また、火葬遺構の底からは、棺を置くための「棺台」の石が2列に並び発見されました。底近くにある棺台付近からは、やや大きい火葬骨と銭貨が出土したため、火葬した遺体が遺構の底に落ちたものと思われます。
安塚古墳群の火葬遺構は遺物の残りが良く、出土遺物から穴のなかで遺体を火葬した方法がわかりました。

火葬遺構の精査(SK1053)

火葬遺構の掘り下げ(SK1067)

炭化材の精査(SK1071)

棺台の近くから出土した銭貨と火葬骨、炭化材(SK1052)
引用・参考文献
狹川真一2011『中世墓の考古学』高志書院
関口慶久2006「墳墓堂」『季刊考古学』第97号
「特集中世寺院の多様性」雄山閣
中野豈任1988『忘れられた霊場』平凡社