-横穴式石室をもつ古墳-
兜山遺跡は、千曲川西岸、佐久市大沢地籍にあり、八ヶ岳連峰から東に伸びる丘陵の南斜面に立地しています。平成20年度に実施した確認調査(トレンチ調査)では、竪穴住居跡などは確認されなかったものの、未周知の古墳の存在が明らかになりました。昨年度に石室外側と周辺のトレンチ調査を行い、本年度、いよいよ石室の発掘調査に着手しました。
本古墳は、遺体を納める施設として横穴式石室を有しています。横穴式石室は長方形の一方の壁に出入口を設けた石室で、ふさいだ出入口を開けて二回三回と、新たな遺体を運び込むこと(追葬)ができる点が大きな特徴です。佐久地域では6世紀後半からつくられるようになります。
本古墳は、墳丘はすでに失われ、石室も半分崩壊していて、残り具合は良好ではありませんが、佐久地域の古墳時代~古代の歴史を考える上で貴重な資料になることが期待されます。
なお、7月14日(土)には、古墳の現地説明会を計画しています。
斜面に築かれた本古墳は、墳丘がすでに失われ、横穴式石室が露出していました。南側に出入口を設けた横穴式石室ですが、出入口側(写真左側)は大きく崩壊しています。最奥部のみ残る東側壁(そくへき)石はほとんどむき出しの状態です。出入口側にある、とりわけ大きな三つの石は崩れ落ちた天井石の一部と考えられます。
手前の大きな石(苔が生えている)が奥壁で、その右に西側壁の一部が見えています。天井石がなくなったために、上部の壁体石や裏込め石(壁体石の外側に詰めた小形の石)が崩壊し、石室内を埋めています。
石室内をいくつかの区画に分け、堆積した土石層の記録(断面図や写真等)を取りながら掘り下げていきます。床面まではあと1m近くあるでしょう。
40㎝ほど掘下げたところです。石室の状態が次第にわかってきました。石室の幅は奥壁付近で約1.3mあり、長さは、西側壁が約4m、東側壁が約1.5m残存しています。石室全体の規模は明らかではないものの、奥壁付近の幅1.3mという点からすれば、佐久地域でも小形の部類に属する石室といえそうです。
本来、この順番で並んでいたか明らかではないのですが、天井石と思われる三つの巨石を並べてみました。個々の石は、石室幅より若干広い幅1.4mほどあり、奥行きは約1mです。したがって、あと一つないし二つはあったとみてよいでしょう。