Research調査情報

2025年6月5日

安塚古墳群 2025年度発掘調査情報(2)

【発掘を開始してから約1か月、今は?】

 5月に国土交通省が松本波田道路事業用地内の草刈りをおこなったことで、東京ドーム(グラウンド部分)の約1.5倍相当の21,000㎡に及ぶ安塚古墳群の広さが実感できるようになりました。

 発掘調査は、今年度調査範囲のなかでもっとも西側の地区でおこなっています。発掘を開始してから約1か月間の調査の結果、昨年度調査した古墳がつくられた時代とは違う中世の遺構・遺物が発見される成果があがっています。

広いグランドを彷彿させる事業用地

 

【礎石建物跡の発見、お堂か?】

 令和5年度に松本市教育委員会がおこなった試掘調査では、古墳の石室の一部の可能性が高い石列を発見し「第16号古墳」と仮称しました。今回、試掘で発見された石列のまわりを広げて精査したところ、地面よりやや高く方形に盛り上げた場所(以下、「マウンド状の高まり」と呼びます。)から扁平な河原石が複数みつかりました。この河原石は等間隔にならぶことから、礎石建物跡の「礎石」と考えられます。また、建物跡の内側は硬く叩き締められており、そこから中世の内耳鍋と銭貨、刀子が出土しました。礎石建物跡とマウンド状の高まりの時期や性格は、今後の調査で明らかにする予定です。発見された礎石建物跡は、各面が東・西・南・北方向を向くお堂と考えられ、松本市域での発見は珍しく、今後の調査が期待されます。

左:マウンド状の高まり 調査風景

(白色点線:現時点で想定される礎石建物跡のかたち)

右上:内耳鍋の出土状況

右下:3枚重なって出土した銭貨

 

【礎石建物跡は宗教・信仰的な建物か?】

 お堂と考えられる礎石建物跡では、叩き占めた面から焼けた骨や炭の細かな破片が多く出土しています。このことから、お堂は火葬骨の埋納に関係した建物であった可能性があります。今調査している場所は、考古学や墳墓研究でよばれている「葬地」であったと言えます。

骨と炭の出土状況

 

【火葬に関係した遺構を発見】

 現在の遺構検出作業中に、壁が真っ赤に焼け、内部には炭化物が多く埋まる穴が5基みつかりました。これらの穴からは、焼けた骨や銭貨が出土しています。松本波田道路改築に伴う真光寺遺跡と南栗遺跡の調査事例を参考にすると、これらの穴は他界した人を焼いた中世の「火葬施設」もしくは火葬骨を埋納した中世の「火葬墓」と考えられます。

左:火葬遺構の出土状況

右:銭貨と骨の出土状況(緑色:戦果、白色:骨)

 

 

参考文献

狭川真一編2007『墓と葬送の中世』高志書院

狭川真一著2011『中世墓の考古学』高志書院

 

安塚古墳群発掘だより2025年度第2号(PDF: 672KB)

 
 

カテゴリ:中信,安塚古墳群,調査情報