書名:一般国道18号(坂城更埴バイパス)埋蔵文化財発掘調査報告書3-千曲市内その3-
副書名:東條遺跡ほか
シリーズ番号:92
刊行:2012年(平成24年)3月
-古代のはじまりから中世前期までの更級郡の歴史を考える-
国道18号坂城更埴バイパス建設事業にともなう発掘調査報告書を刊行しました。平成10年に発掘調査を開始し、これまで5つの遺跡の成果を報告しました。今回の報告書は、峯謡坂遺跡、西中曽根遺跡、東中曽根遺跡、東條遺跡の4つの遺跡に関するものです。これですべての遺跡についての報告を終了しました。古代更級郡内のひとつの郷域を南北に貫くように発掘し、7世紀前半から16世紀まで約1000年間にわたる集落遺跡の変遷を捉えることができました。古墳時代後期の農業集落遺跡、古代更級郡衙に関わる特殊な遺跡、中世門前集落遺跡等、地域史を構築する上に重要な遺跡を報告しました。
2006.3『一般国道18号(坂城更埴バイパス)埋蔵文化財発掘調査報告書1 –千曲市その1- 社宮司遺跡ほか』
2010.3『一般国道18号(坂城更埴バイパス)埋蔵文化財発掘調査報告書2 –千曲市その2- 社宮司遺跡六角木幢保存修復編』
2012.3『一般国道18号(坂城更埴バイパス)埋蔵文化財発掘調査報告書3 –千曲市その3- 東條遺跡ほか』
【調査区遠景(冠着山方向より遺跡を望む)】
遺跡は姨捨土石流台地及び佐野川の扇状地上にあります。写真中央部に新設された国道18号バイパスが見えます。この地に古代更級郡衙があったと推定されています。
【東條遺跡の遠景】
名勝「姨捨の棚田」から下り、千曲川に近接したところに東條遺跡があります。古墳時代の終末より中世前期まで継続する集落遺跡で、とくに武水別神社の門前に発達した中世の集落跡では重要な発掘成果がありました。
【東條遺跡の方形石組の竪穴建物跡】
東條遺跡には中世面が2面あり、室町時代を中心とする検出面から、方形に石組みした建物跡が15棟確認できました。建物の性格を推定できる根拠はほとんど見つかりませんでしたが、蔵のような施設であった可能性がひとつ考えられます。
【東條遺跡出土の刀子と漆皿】
東條遺跡の中世面で確認した井戸跡からは、漆器の椀や皿をはじめ、木製の遺物が数多く出土しました。中には刀子と漆皿がセットで出土した例もありました。
【東條遺跡出土の硯】
中世面の出土遺物は、これまでHPで紹介してきました漆器の椀や皿のほかにも、青磁や白磁の皿など約600点、かわらけは約7000点もの出土がありました。硯も多く、大きいものから小さな携行用に至るものまで様々です。